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[C25] はじめまして!

面白い作品ですね!
うちもTSF系のサイト持ってるのでよろしくネ(★ゝω・)b⌒☆
http://tsfsite.blog52.fc2.com/

[C26] スルー推奨

悪質な無断転載サイトです。
支援所からの被害が多く、愉快犯的にこちらへの書き込みまで行う人物です。
musiされることをお勧めします。

[C27]

俺としては、作者さんにしっかりとした意見を貰いたいと思ってます。
私怨所で画像を無断転載してる件について。
あなたの作品が俺のとこで転載されていても、文句言えませんよね?
俺はあなた達のことを憎んでいます。

[C28] はじめまして

しゃくられ様
貴ブログは一度拝見させていただきました。今後見る気はありませんが。
無断転載は悪意に基づく行為でしたか。憎んでいる相手の猿真似をする心境は、私にはよくわかりません。
今後のコメントは禁止させていただきます。


スルーを提唱してくださった方
ご忠告ありがとうございます。これ以降は無視することにします。

[C29]

続きは書かれないのですか?

[C30] もうちょっとお待ちください

sageさん、初めまして。
滞ってしまっておりますが、投げ出すつもりはございません。いつまでにと宣言はできませんけれど、なるべく早く次のエピソードをお見せできるよう努力いたします。

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1/16改め1/4(十七歳の夏)

アダルトTSF支援所掲示板で細切れに書き進め、それなりの分量になったところで支援図書館に投下したものです。
続編はちょっと中断状態ですが、まとまったらまた支援図書館にアップするつもりです。

------------------------------
------------------------------


「えーと……なあ、この問題どうすりゃいいんだ?」
 問題集を見せると、隣に座る黒髪の男子は不機嫌そうな顔でこっちを睨む。
「どこがわからないんですの?」
「どこがわからないのかがわからない」
「このおバカ! こんなの一年生の授業でやったじゃありませんの!」
「そんなに怒らなくったっていいだろ、俺がバカなことくらい、アンネリーゼだって知ってるくせに」
「そのバカが『アンネリーゼ』の姿をしてるから怒ってますの!!」
 目の前の男子――一週間前までの『俺』の姿をしたアンネリーゼは、金髪碧眼の高貴な美少女だった時と寸分違わぬ口調で俺を叱りつける。でもどこからどう見ても大和民族の男子に過ぎないその身体には、激しく似合ってない。
「ようやく日本語の読み書きも上達して、中間テストでやっと一桁順位にこぎつけたんですもの。多少の下落はやむなしとしても、最低でも三十番以内には入ってもらいますわよ」
「無理! そんなの無理! 俺、いつも二百番以内に入れるかどうかが争点なのに!」
 ちなみにうちの高校は一学年三百五十人。
「期末テストまでまだ三週間あるでしょう。本気でやればきっと竜彦でもできますわ。何せ今のあなたは、公国一の才媛と謳われたアンネリーゼの頭脳を使っているんですのよ」
「……前からそうだったけど、おまえってばほんとにナルシストだよな。あ、今は自分の身体じゃないから自己愛とは違うのか?」
 俺が茶々を入れると、アンネリーゼはまた不機嫌そうな顔になってそっぽを向く。追撃してやろう。
「仮に脳味噌の出来がよくても変なオプションのせいで集中できないっての」
「何のことですの?」
「これ」
 テーブルに乗っかってたゆんたゆんとしていた物体を両手で持ち上げる。最初の三日くらいは自分で見ても触っても興奮してたけど、最近は悲しいことに慣れてきてしまい、あまつさえ邪魔に感じたりすることもある。
「ぶ、無礼なことおっしゃらないで!! 人の自慢の……だ、だいたい、竜彦ってばこうなる前は散々わたくしのそれを嫌らしい目でじろじろ眺め回していたくせに!」
「こーいうのは他人のものを時々見て時々触って楽しむもんだっての! 自分の胸にくっついてもうれしかねーや!!」
「それを言うなら竜彦の方こそわたくしに不気味なものを押しつけてるではありませんの!! 普段はひどく小さいくせに毎朝毎朝気持ち悪いくらい大きく硬く膨らんで、おぞましいったらないですわ!!」
 アンネリーゼは反撃に俺のプライドを砕くようなことを言ってのけた。
「ひ、ひどく小さいって、そ、そんなでもないんじゃ……」
「トイレで他の男子のそれが目に入ってしまうんですもの、どうしたって見比べてしまいますわ。あなた、間違いなく平均以下ですわよ。それに可愛く皮……」
「も、もうそれ以上は言わないで、お願いです公女様、わたしが悪うございました……」
 俺がアンネリーゼに対して滅多に使わない敬称で呼びかけると何とか機嫌を直してくれた。
「わかればよろしいんですの。いつまでもわたくしの顔でみっともなく媚びへつらうのはお止めなさい」
 へへーっと最後の嫌がらせに平伏しつつも、どうにか関係修繕。
 口げんかはやめにして、また勉強に取り掛かる。一年の時の教科書を本棚の奥から引っ張り出すと、確かにさっきの難問の対処法も書いてあった。
 でも退屈してくると、またアンネリーゼにちょっかいをかけてみたくなる。
「さっきは俺の身体的欠陥を散々あげつらってくれたけどさ、もしかしたらそれっておまえが一生付き合う身体なのかもしれないんだぞ」
「そんなことありませんわ。わたくし、1/4なんて低い確率に当たるつもりはありませんもの。再来年にはきちんとお返ししてさしあげますわ」
 澄ました顔で平然と答える
「もう最初の1/4は引き当てちまったくせに」
 からかいながら、言ってるこっちも落ち着かなくなる。このネタはやめておけばよかった。
 二年後の俺たちの誕生日にその1/4が本当に発動したら、俺は俺で一生ヨーロッパの小さな国のお姫様ってことになっちまうわけなんだし。


 アンネリーゼの暮らす公国は、ドイツだかオランダだかデンマークだかの近くにある、日本の中学レベルの教科書には載らないくらい小さな島国だ。六、七百年くらい前から成立してる。ペストとか異端弾圧とか、その手のゴタゴタでヨーロッパの色んな国から追われた人が寄り集まってこしらえたらしい。
 建国がそんなだからか、伝承としてはさまよえるオランダ人とかに似た、神罰がどうのこうのな景気の悪いものが多め。そして主君たる公家の人々は、そうした神罰を民の代わりに受ける存在として、尊敬といくばくかの哀れみの念を常に集めているという。
 二十年前に公家の不運な事故(一応言っておくと陰謀とかはまったく関係なし。神罰との関連性は国民の間で公然と語られているそうだが)が重なって、日本に留学していた末の公女様だけが生き残り、留学先で出逢った日本人の彼氏を連れて帰国、女公即位と同時にそのままゴールインしてしまったとのこと。元々成り立ちが成り立ちだから、人種とかはあまり気にしないお国柄らしい。まあ、その彼氏が白人とのハーフだか何かで容貌がほとんど違和感なかったことも大きいんだろうと俺は母親から聞いている。
 なぜ唐突に俺の母親の話が出てくるかと言うと、そのお姫様が留学してた時に高校も大学も一緒でずっと仲良くやっていたから、さらにはお姫様と結ばれた彼氏の方とも幼なじみでずっと友達だったから、だそうだ。俺にしてみれば傍迷惑なことに。
 で、その夫婦の間に生まれたのがアンネリーゼということで、話がつながる。彼女も母親に倣って日本へ留学することになり、俺の母親が日本にいる間の世話を申し出たのはむしろ必然の成り行きだったと誰しも思うだろう。
 実際にはもう一つ、実の息子を人身御供にしかねない(てか、実際にしちまった)意図があったわけだけど。


 そんな風に去年の春から我が家に居座って散々俺と衝突してきたこの気位の高い公女様の家系には、呪いのようなものがある。
 十七歳の誕生日の朝、1/4の確率で、物理的に一番身近にいて誕生日が同じ異性と心が入れ替わる(起こる時は避けようがない。かつて公子を大陸の保養地まで避難させて条件に合う近隣住人を追い払った時には、屋敷の三十キロ先で暮らしていた羊飼いの娘と入れ替わった)。
 そして入れ替わってしまった場合、十九歳の誕生日に3/4の確率で元に戻る(戻れない場合、これまでのケースでは全員一生そのまま)。
 つまり1/16の確率で、入れ替わったまま元に戻れない人間が出るというわけだ。いや、まだ今回がそうなると決まったわけじゃないが。
 一週間前の朝、変わり果てた自分の姿を知って大混乱に陥った俺たちに、俺の母親はにこやかにそんなことを説明してくれた。
 事情を知らなかったのは俺ばかりではなく、アンネリーゼも「そんなこと母様からも父様からも聞いてませんわ!」と『俺』の身体で激昂した。だが母は、そんな姫様をも「それほど高くもない確率だから、やめておいたのよ。あれこれ悩んだけど結局何も起こりませんでしたってことになる可能性がよっぽど高かったんだもの」と軽くあしらい、今後の慣れない異性の身体と生活については全面的にサポートすると宣言すると、憤懣を封殺してのけた。まあ、自力で元に戻る方法は本当にさっぱりわからないそうなので、とりあえず当事者の俺たちとしても、この二年間を我慢するしかないわけだ。
 当初は怒れるアンネリーゼをなだめる側に回っていたが、もちろん俺だって後で親に文句を言った。生年月日が同じだなんて、俺を生む前から狙っていたとしか思えない。
 しかし母親にはあっさり否定された。出産日なんて狙って一致させられるものじゃない。だいたい、俺をあてがうつもりなどなかった、と。
「最初はもちろん、公国の男の子が候補だったのよ。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた相手の方が、適応もしやすいでしょ? でもアンネリーゼちゃんが少し難しい性格なものだから、なかなかお友達ができなくって」
「だからってどうして俺がそこで出て来るんだよ!?」
 唇を尖らせた俺に、母親はいつもの調子で柔らかく笑いかけた。
「あなたは、わたしの自慢の息子だもの」
「……恥ずかしいこと言うんじゃねーよ」
「あなたならこの先、きっとアンネリーゼちゃんを支えてあげられる。大丈夫よ」
そう言うと、背の低くなった俺の身体をぎゅっと抱きしめ、優しく頭を撫でる。こんなことされたの、小四の時以来だぞ。
「……元に戻れなかったらどうすんだよ。俺、ヨーロッパへ『帰る』ことになっちまうんだぞ」
「今から悪い可能性ばかり考えるんじゃないの。それに、そうしたらわたしとお父さんは外戚ってことになれるんじゃないかしら? なら公国移住も悪くないわね」
 歴史の授業で聞いたことのある「外戚」の意味を思い出し、俺は身震いした。
 ちなみにその晩遅くに帰宅した父親は論外の反応を示してくれた。
「竜彦はいいなあ。羨ましいなあ。父さんも昔から女の子になりたかったんだけど結局なれずじまいでなあ。でも竜彦みたいな可愛いTSっ娘の父親になれたんだから、本当に生きててよかったなあ」
 とりあえず、マジで呻き声を上げるまで蹴り続け、二度と俺の前でそういう話題は口にしないよう調教しておいた。


 入れ替わって十日目。日曜だけど今日も朝からせっせと勉強勉強。アンネリーゼにしごかれ続きの地獄のような毎日。
 まあ、残りの高校生活はお互い今の身体で過ごすことが確定、大学受験もこの身体でやることになるわけで、平々凡々な『俺』はともかく才色兼備の次期女公として祖国で一種のアイドル扱いになってた『アンネリーゼ』が一浪なんてわけには……行かないんだろうな。
 国立の名の通ったところ、受からなきゃいけないのかな。せめて三教科でOKな私立に負けてもらえないかな。もっとも、何にせよ今は五教科いずれもみっちりやらなければ期末で無惨な点数を取ってしまう。そしたら俺の夏休みが無惨な勉強漬けになることも決定だ。
 そんなことを考えながら問題集の答え合わせをしていると、向かいに座っていた『俺』の身体のアンネリーゼが何だかそわそわしている。
「どした? トイレか? あ、でもさっき行って来たはずだよな。まだ朝飯食ったばかりだし、飲み物もあるし……」
 後で振り返ると、図らずも俺の言葉が逃げ道を残らず潰してしまっていたようだ。
 『俺』の身体のお姫様は進退窮まったような悲壮な表情になると、すごく真面目な顔で姿勢を正し俺に向き直った。
「あの……竜彦。教えて欲しいことがありますの」
 あまりに真剣な姿に、憎まれ口を叩くのも忘れて応じてしまう。
「な、なんだ? 俺にできることなら何でも教えるぞ」
 その言葉に安堵したように息をつくと、姫は無言で手招きした。俺はテーブルを乗り出して、顔を近づける。
「これ……どうすればいいんですの?」
 そして潔癖で知られる公女が指差すは自分自身の股間。
 そこには『俺』の息子がズボン越しにもはっきりわかるほど強烈にそそり立っていた。
 一瞬、俺は自分でも不思議なほど動揺してしまう。男子同士でもよほどバカな気分になってない時は、互いのものを、それも巨大化してる時のものを見せ合うような真似はしないし。
「こ、これは……もしかして、入れ替わってから何もしてない?」
「『何も』って、何をですの? それは、トイレには行きましたし、お風呂では泡で包んで洗いもしましたけど……」
 ああ、公女様、あなたは何がわからないのかもわからないわけですね。いや、聞く前から見当はついてたけど。
「いや、つまり……」
 俺はなるべくショックを与えないよう言葉を選んで説明した。それでも刺激は強すぎたようで、アンネリーゼは顔を真っ赤にする。つい三日前、サイズや形態で俺を散々貶めたのと同一人物とは思えない。
「だ、だって、その、男子の会話で大きさとかの話は頻繁に出ますから覚えましたけれど、その、実際の用途に関する話は、隠語が多すぎて……竜彦の今の話を聞けば、思い当たる節は多々ありますが……」
 改めて恥ずかしく感じたのか、両手で顔を覆ってしまう。入れ替わる前だったら滅多に見られない素敵な光景として脳内保存しただろうけど、『俺』の身体でやってるから見ていて色々せつなくなる。股間はまだテントを張ってるし。
「それで……わたくしも、そういうことをしなければなりませんの?」
 やがて顔を上げると、恨めしそうな目で睨んできた。
「まあ、した方がいいんじゃね? 寝てる最中に自然に出るに任せるって手もあるにはあるけど、起きた時の気持ち悪さはかなりのもんだし、出てくれるまでは外出中とか人前とかで今みたいにビンビンになっちまう危険性もあるだろうし。それよりは自分でコントロールした方がまだマシだと俺は思うぜ」
 アンネリーゼは悪漢に残酷な二者択一を突きつけられたヒロインみたいな気分なのか、しばらく頭を抱えて悩み続け、そのうち赤いままの顔で俺に言ってのけた。
「なら……竜彦、その手伝いをお願いいたします」
「て、手伝いって何だよ?!」
「で、ですから、その、わたくしは自分で自分の陰部を触りたてて慰めるような、はしたない真似はできませんもの! この身体の本来の持ち主である竜彦に、そうした作業は任せますわ!!」
「何だそりゃ! てか、俺がやるってことは、『アンネリーゼ』のきれいなお手手で『竜彦』の気持ち悪い物体を触っちまうってことだろうが!」
「わ、わたくしが触ってしまうよりはまだマシですわ!」
 裏返った声で叫ぶお姫様。けど即答したってことは、俺が指摘するまでもなく承知してたってことだよな。
 元の『自分』が触る方が、今の自分が触るよりはまだ我慢できる……女の子の考え方としちゃ、そういうものなのかね。
「……わかったよ」

 日曜日だが、幸い両親は出かけている。
 俺はアンネリーゼと風呂場に入り、姫様の下半身を裸にすると浴室の椅子に座らせた。
 まさか俺がお姫様を手コキするなんてなあ……。
 十日前までは想像もしなかった巡り合わせに俺は軽くため息をつくと、アンネリーゼの背後に回ってしゃがみこんだ。
 元は『自分』の持ち物とは言え間近で眺めたい代物じゃないし、もし発射のタイミングを計り損ねたら自分で自分に顔射することになっちまう。男としてそんなことは我慢ならない。それに、姿勢としてはこっちの方が本来のポジションに近いし。
「よ、よろしくお願いいたしますわ」
 アンネリーゼが硬い声で言った。
「そんな構えることないって。男なら日課みたいなものなんだから」
「わたくしは、女子ですもの」
 そんなこと『竜彦』の声で言われても説得力ないと思うが、無駄に相手を傷つけるのも嫌なので反論はやめておく。それにしても『俺』ってしゃべり方次第じゃけっこうかっこいい声になるんだな……台詞はアレだけど。
「じゃ、いくぞ」
 敢えて軽く言うと、背後から右腕を回して股間に伸ばす。
 と、熱く弾力ある物体に指先が触れた。
「きゃっ!!!」
 アンネリーゼがたぶん初めて経験したであろう刺激に悲鳴を上げる。
「騒ぐな騒ぐな」
 言いながら、勃起しているそれを指先で軽く握る。俺の方が体格が小さいから、アンネリーゼの背中に胸をぴったり押しつける格好だ。
 そして、手にしたモノを、適度な速さでこすり始めた。
「た、竜彦……」
 上ずった声でアンネリーゼが俺の名を呼ぶ。特に用があるというわけでなく、未知の感覚を持て余しているようだ。
「変な、感じですわ……身体の奥から何かが噴き出そうとしているみたい……」
「それが男の感覚だよ」
「女の子とは全然違う……こんな激しくて急なんて……」
 姫君はカルチャーショックを受けている模様。
 俺は俺で、握っているのに握られている感触が股間から伝わってこないことにいくらかショックを受けていた。触り慣れた『俺』なのに、それは今の俺のものじゃない。そのことを改めて実感する。手が小さくなっているせいで以前と感覚が食い違うことも、自分の変化を思い知らされるようで落ち着かない。
 まあ、そんなことは考えてもしかたない。今はさっさとこの異様な状況を終わらせよう。
 十日間我慢してたわけだから、絶頂を迎えるのは早い。そう思って若干手の動きを早めてみた。
「だ、駄目、やめて……!」
 切羽詰まった声に、思わず手を止める。
 アンネリーゼは荒く息をつき、両手で頭を抱え込んでいた。股間はまだ怒張し続けているが、俺は一旦手を離す。
 アンネリーゼは、十日前まで可憐な公女だった少年は、かすかに全身を震わせていた。性的な興奮もあるだろうが、たぶんそれとは別の感情に囚われて。
「怖い、です」
 しばしの沈黙の後、ぽつりと呟く。
「身体が入れ替わってしまったのは眠っている間のことで、自分ではどうしようもないことでした。でも、今わたくしがしようとしていることは、自分で自分を変えてしまうことのように思えて……」
 背後の俺に語りかけるその背中は、今の俺より大きいのに、とても小さく見えた。
「これをしたら、自分が自分でなくなってしまうような気がして……」
 変化に対する不安と恐怖。女の子が女の子でなくなってしまい、男の子になってしまう。それは確かに恐ろしいことだろう。
 でもそれは……。
「三年前の俺みたいだな」
 俺はそう言うと、使ってなかった左手でアンネリーゼの今は黒い頭を撫でた。
「え?」
「俺が初めて射精したのは中二の時でさ。その少し前から、朝目が覚めたり風呂場で弄ったりするたんびにチンチンが硬くなっちまうのが不思議で、不安だった」
「…………」
「どうも触っていると気持ちよくなるっていうのが次第にわかってきて、壁とか畳とか机の角とかにこすりつけてたんだけど、ある晩風呂に入っていてずっとこすり続けていたら、やばいくらい気持ちよくなってきたんだよ。それで俺は、一度手を止めた」
 俺ってば、異国のお姫様相手に何自分の射精初体験を語っているんだろう。そうは思ったけど、口は止まらない。
「自分が今、それまでしたことのないことをしようとしてる。それが自分を変えてしまうんじゃないか、そんな風に怖くなってさ」
「わ、わたくしは」
「でも、漠然とした知識はあったから、そこから前へ踏み出すことはできたよ。一人前の男なら誰でもやってることなんだ、これによる変化は受け入れるべきことなんだって……まあ、そこまで言葉にしてきちんと考えたわけじゃないけどさ」
「でもわたくしは、男じゃなくて」
「今は男だ。これから二年間は男としてやっていかなくちゃいけない」
 きつい言い方だろうか。でも俺たちは仮装しているわけじゃない。身体そのものが変わってしまったことを自覚しておかないと、いけない気がする。
「だいたい、おまえのご先祖様たちだって、それは乗り越えてきたことなんだろ?」
 さらに叱咤。負けず嫌いで強気なアンネリーゼにはこれが一番効くかと思った。
 でも、俺の言葉に、元少女はなおさら全身を強張らせる。萎縮していくかのように。
 じれったくなった俺は、お節介をすることにした。
「そりゃっ」
 もう一度手を伸ばし、しぼみかけていた物体を握りしめる。先走りの液がぬらぬらと溢れ出て、少し掴みづらい。
「や、やめてって言ったでしょう?!」
 力ない拒絶。不安と恐怖はまだ大きいだろう。でも、アンネリーゼ自身もとっくに感じているはずだ。自分が同時に抱いている、好奇心と興奮と快感を。
「大丈夫だよ。怖がることなんかない。力を抜いて、気持ちよさに身を任せれば、それでいい」
 畳み掛けるように言葉を連ねる。姫を安心させるような言葉を、思いつくままに。
「俺がついてる」
「!」
 色々言った効果か、硬さを早くも回復させた股間の刺激が強まってきたからか、アンネリーゼの緊張がいくぶんか和らいできた。
「竜彦……竜彦……!」
 そのまま一気に扱き上げる。
「あああああんっっっっっっ!!!」
 ピュッという水鉄砲並みにくっきりした音。それを裏付ける勢いと量で、アンネリーゼの先端から白濁液が噴き出すと壁にかかった。握りしめていた俺の手にも熱いくらいの精液が次から次へとこぼれてくる。
 生まれて初めての射精を済ませた公女様はうつむいて、さっきまでよりもさらに息を荒げている。初体験を終えたばかりの「後輩」を急かす気にもなれず、俺はあそこから手を離すとじっと待った。
「竜彦……」
 しばらくして口を開いたアンネリーゼは、いつもとはまだ全然違う、弱々しい泣きそうな声をしていた。そりゃ色々ショックだったよな。
 もしかしてこの姫様、俺が思っていたほど強くはないのかもしれない。
「半分無理矢理みたいな真似して、悪かった」
 だから、まずは俺から謝ると、戸惑ったように息を飲む。その意味はよくわからないが、俺は話を一気に日常レベルへ引き戻した。
「でも……すっきりしたろ? これで今日の間くらいは、不意の勃起で悩まされることもないはずだぜ」
「……そ、そうですわね」
 やっといつもの口調が戻ってくる。
「では……明日からもお願いいたしますわ」
「げっ!」
「あら、どうしましたの? 一回解消しても収まるのは短期間なのでしょう?」
「ああ、まあ、そうなんだけど……」
 元は『自分』のでも、今は他人のアレだぞ。それを連日触るってのは……。
 けど、しかたないか。お姫さんが猿みたいにあの行為に励む図というのも、あんまり見たくないし。
 肯きそうになったところへ、さらなる追加条件が加えられる。
「入れ替わった直後に竜彦のお母様から伝えられていたんですが、わたくしたちが一緒にお風呂に入っても構わないとおっしゃってくださいましたわ。あれはこういう意味だったのですね」
「つまり……明日からは風呂入る時にってことか?!」
「ええ。今回とあまり変わらないでしょう?」
 毎晩風呂場で美少女に手でいたしてもらう高校生ってどんなタイプのエロゲだよ。畜生、される立場ならともかく、してあげるなんて何も旨みがないだろが。
「おまえ、『自分』の貞操の危機とか考えてないのか?」
「無礼なことを言わないでください! わたくしがそんなはしたない真似するわけありませんわ! だいたい、最初にこれを済ませてしまえば問題はないでしょう?」
「うーん……」
「何を嫌がってるのか、よくわかりませんわ。まさかわたくし相手に裸を見られるのは恥ずかしいなんてこともないでしょうに」
「!! あ、当たり前だろ。この身体はおまえのものなんだから」
 生まれつきの女子じゃあるまいし、そんなわけあるか。ここまで粘ったのは、ただ単に触りたくないってだけだ。そうに決まってる。
「さっき『俺がついてる』と言ってくださったのは、嘘でしたの?」
「いや、……わかったよ、やってやるさ!」
 俺は少しやけ気味に承諾すると、精液まみれなアンネリーゼの股間をやや乱暴に洗い始める。射精直後の敏感な刺激に公女様はまた悲鳴を発した。
「ああんっ!!」
 この声も当分聞くことになるのか……。



「痛い……」
 入れ替わって三週間。まだまだ梅雨の明けない空は、じめじめ鬱陶しく小雨を降らせている。
 学校から帰って来た俺はベッドで仰向けになりながら、逆さまの窓越しに薄暗い空を眺めていた。
 女の子と入れ替わった以上、一ヶ月以内にこうなるのは当然のことだったが……生理の痛さってやな痛さだなあ。外科の痛さじゃなくて内科の痛さって感じ。授業をきちんと受けきった自分を褒めてやりたくなる。
 母親も出かけていて、家には俺一人。アンネリーゼはまだ学校。
 俺たちが入れ替わった頃から準備が始まってこないだ終わった、クラス対抗の校内合唱コンクール。それに関してクラス内で起きたちょっとしたゴタゴタを、『俺』なアンネリーゼがうまいこと捌いてから、何となくあいつはクラスの中心的存在になっている。というわけで今日もクラス委員の手伝いみたいなことに駆り出されているわけだ。
「やっぱりすごいんだなあ、アンネリーゼ」
 元々の『アンネリーゼ』自身は、留学生ということや、(家で俺に対して示すほどではないにせよ)どこか高みに立ったような言動から、周囲との間に微妙な壁を築き築かれていた観がある。でも『竜彦』としてクラスを引っぱる今のアンネリーゼは、リーダーとしての風格みたいなものが感じられた。
「それに比べて俺ときたら……」
 生理がつらくて家でおねんね。アンネリーゼは去年から一度もそんな姿見せたことはなかったのに。
「俺ってなさけないなあ」
 自分で口に出してしまうと、ますますみじめな気分になってきた。
 そのうち、玄関の鍵が開いて誰かが入って来た。あの足音は、アンネリーゼだ。
「竜彦、失礼しますわ」
 言いながらノックと同時に入ってきた。手にはコンビニの袋を提げている。
「ノックの意味ないだろが。俺の返事を待てよ」
「待ってたら入れてくれましたの?」
「気分が悪いからパスだパス」
「そう言うと思ったから勝手に入ったんですの。はい、これ」
 袋から出して手渡すのは、コマーシャルでよく見かける薬の箱。これって頭が痛い時の薬だろが。CMでも女優が「頭痛、生理痛に」って……
「ああ、こういう時にも効く薬なんだな……」
 まさか自分が聞き流していた部分でお世話になるとは思わなかった。
「ありがとな。さっそく飲ませてもらうわ」
 台所へ行こうと上体を起こすと、アンネリーゼはそれを制して袋から別のものを取り出した。
「はい」
 ミネラルウォーターの小瓶まで用意してる。
「……ずいぶん気が利くなあ」
「バカにしてますの?」
「いや、悪い」
 口の利き方があれだし俺に対する普段の態度が尊大だから忘れがちだけど、やっぱりこいつって目配り心配りがしっかりしてるんだよな。この三週間、こいつと仲のいい女子から「アンネちゃん、前よりぼんやりさんになっちゃった?」なんてからかわれたことも数回ある。
 そして薬を飲み終えた後、思わずこぼれたため息も、耳聡く聞き取られた。
「どうしましたの、竜彦?」
「いや……俺って駄目だなあって思って……」
 普段なら「その通りですわね」と斬り捨てられそうな泣き言。なのにアンネリーゼの奴、こんな時に限ってふざけてくれない。
「何か、ありましたの?」
 そう言うと、真剣な顔をしてじっと見つめてくる。きちんと答えないといけない雰囲気。
「別に……何があったってわけじゃないけど」
 アンネリーゼの落ち着いた姿勢や的確なタイミングの相槌が呼び水になって、ぽつりぽつりと話していった。『竜彦』になったアンネリーゼが立派に見えること。なのに『アンネリーゼ』になった俺は、色々と駄目なこと。
 話していくうちにますます気分が沈んでいく。つまりこれは、俺という存在が、本質的に駄目な奴だってことじゃなかろうか。
 少し、あくまでほんの少しだが、泣きそうな気持ちになってしまった頃、アンネリーゼが口を開いた。
「バカ」
 今までこいつの口から聞いた、一番優しい「バカ」だった。
「あなた、わたくしが『竜彦』としてうまくやっていけてる理由を把握なさってないんですの?」
「ふえ?」
 唐突な問いに、思わず口をつく間抜けな声。
「本当に、おバカさんですわね」
 罵りながら、俺の頭をそっと撫でる。まるで、慈しんでくれるかのように。
「正論だけ言っても皆が従ってくれるわけではありませんわ。『アンネリーゼ』ではなく『竜彦』が言うからこそ……つまり、周囲と適切な距離を置いて和やかに付き合ってきた今までの竜彦がいたからこそ……クラスの色々な人が話を聞いてくださるんですの。皮肉でなく申し上げますけれど、竜彦と入れ替わったのはいい勉強になってますわ」
「で、でも……」
「それに、このことも御存知ないようですけれど……入れ替わってからの『アンネリーゼ』は以前よりも人気があるんですのよ。人当たりが柔らかくなってとっても可愛くなったって」
「え……」
 可愛い、とアンネリーゼに言われて、不思議と顔が熱くなる。何だよこれ。別に風邪なんかひいてないのに。
「全然竜彦らしくないですけれど……初めてのことで、少し気持ちが不安定になっているんですわね。今はあれこれ考えないで、ゆっくりお休みなさい」
 言いながら、俺をベッドに寝かしつけて上から毛布をかけてくれる。
「う、うん」
 動悸までちょっと激しくなっている。それを悟られるのが、悟られてアンネリーゼを心配させるのが嫌で、寝返りを打つとアンネリーゼに背を向けた。
「お夕飯の頃、また来ますわね」
「わかった」
 アンネリーゼが出て行くと、次第に変調は収まってきて、やがて眠くなってきた。
 まどろみの中、お姫様にさっき言いそびれていたことがあったのに気づく。
 聞こえるわけないとはわかっていても、はっきりと口に出して言い、眠りに落ちた。
「ありがと……アンネリーゼ」

 ちなみに晩飯が赤飯だったことは、言うまでもない。



 梅雨が空けた。地獄のような真夏の暑さが昼夜問わず地上を包み込むまでのごく短い、暑いわりには比較的過ごしやすい期間。なのに放課後、アンネリーゼに連れられて歩く俺の足取りはひたすら重い。
 期末試験の結果が帰って来た。アンネリーゼに涙が出るほどしごかれ、特に直前最後の三日間ほどは生まれて初めてというほど必死に勉強したものだったけれど……総合結果は学年四十九位。アンネリーゼの設定した目標には届いていない。
 横を歩くアンネリーゼは悠々としたものだ。いきなり成績急上昇で不信を招いてはいけないと「各教科、配点五点ほどの問題を二問ずつ間違えておきましたわ」と言っておきながら、全教科十点ずつ足したら上位五位以内に入る計算で、俺の中間テストの時よりもはるかに成績がよくなってるんですけど。
「なんでおまえ、俺の脳味噌使ってるのにそんなに頭がいいんだよ」
 往来なので、ぼやきは小声で。まあ、こんなの今さら言うことでもないけどさ。テスト勉強は全部こいつに指導されてたんだし。
「さあ? 記憶や思考は脳でなく魂の担当ということではありませんの?」
 軽く笑っていなすアンネリーゼ。なんか悔しい。
「そんなむくれなくてもいいでしょう?」
 てなことを言いながら、今度は頭を撫でてきた。うわ、うちの制服着た子が「この色ボケども」って言いたげな目つきしてる。
 それはさておき、問題は俺自身のことだ。ああ、せっかくの高二の夏休みが勉強だけで過ぎていく。
 今こうして連れ回されてるのも、きっと地獄のフルコースの前菜みたいなものなんだ。どこかのスパルタ予備校にでも放り込まれるのかな。それとも「夏休み中に竜彦が済ませる課題」みたいなこと言って山みたいな参考書と問題集を俺の目の前で買い込むのかな。

 今歩いているのは、駅ビルに通じる大通り。高校近くで一番にぎやかなエリアだけど、俺たちの家へ向かう路線とは別方向になるので、二人でここへ来るなんてことはなかった。
 と、アンネリーゼはデパートに入った。コマーシャルじゃよく見かけるけど、平凡な男子高校生には基本的に無縁な、こじゃれた高級デパートだ。
 妙に様になる立ち居振る舞いのアンネリーゼが俺をエスコートしつつエレベーターに乗り込み、降りた階は……洋品店のフロア。その一角には水着売り場が設けられている。
 まさかと思う俺を、アンネリーゼはそこへ導いた。
「ええと、これはどういうことかしら?」
 人目があるので身体にふさわしい言葉で会話。
「臨海学校へ行くんだから、水着の新調しなくちゃいけないだろ?」
 へ?
「い、いいの? だって……あたし、あの成績で……」
 臨海学校にも色々あるだろうけど、うちの学校ではほぼ完全なレジャー。間違いなくアンネリーゼにキャンセルさせられると思ってたのに。
「百位以内に入ってたら上出来だと思ってたんだ。それが四十九位なんだから、立派だよ」
「え、だって、テスト前は三十位以内って……」
「それくらい厳しい目標設定にしないと本気でやらないだろ?」
「ひ、ひどいよお……」
 口ではそんなことを言いながらも、顔は自然とほころぶ。つらい目に遭わずに済みそうなことと、アンネリーゼに褒められたことがうれしくて。
「ということで、水着を買わないとね」
「うんっ」
 元気に肯いてから、それが意味することにようやく思い当たる。
「あれ、ひょっとして……」
「試着お願いいたしますわ。まさかこんなところで変な真似もなさらないでしょうけれど、くれぐれもはしたない振る舞いは慎んでくださいね」
 アンネリーゼは俺の耳元で囁いた。
「さすがにこの身体であれこれ指示することは憚られますから、ここで一旦離れましょう。ワンピースタイプとか、パレオの付いたものとか、扇情的でないものを選ぶようになさいね。一応試着したら検分もいたしますから、その時だけお呼びなさいね」
 ものすごい小声の早口でそれだけ言うと、いかにも渋々彼女に付き合わされた男みたいな面して俺から見る見る遠ざかっていくアンネリーゼ。そこまで完璧に演じられてしまうと、俺としても負けるわけにはいかなくなる。せいぜい水着に興味津々な女の子の振りをしなければ。あながちそれは嘘でもないし。
 だが俺が気持ちを切り替えるより早く、新たな難敵が現れた。店員さんだ。年の頃は二十歳そこそこくらいっぽくて、どことなくとぼけた感じ。
「め、めいあいへるぷゆー?」
「あの、日本語で大丈夫です」
 日本人でなくちゃ理解できないカタカナ英語(てか、ここまで行くとひらがな英語だ)で外国人に話しかけてくるその度胸やよし。本式の流暢な英語で迫られたら、アンネリーゼに最近仕込まれつつあるオランダ語で切り返して追い払うつもりだったんだが、つい地に近い態度で応じてしまう。
「あーよかった、日本語お上手ですねー。あれ、その制服ってことは、ひょっとしてヨーロッパから留学中のお姫様ですか?」
「な、なんでそれを?!」
「いえ、従姉妹があなたと同じ高校の一年生でしてー、こないだうちへ遊びに来た時にそんな話をしてくれたものでー」
「は、はあ」
「水着お探しですかー? たぶんサイズが合うものはそちらではなくこっちの方にありますよー」
「そ、そうですか」
 簡単に懐に入り込まれると、俺は子羊のごとく店員さんに導かれていった。

「お姫様、素敵なわがままボディなんですから、もっと露出が高いものを選べばいいと思うんですけどー」
「いえ、あの、これで結構ですんで」
 どうもこの店員さん、俺に(いや、正確には当然ながら『アンネリーゼ』に)エッチな下着紛いの水着を着せたくてたまらない模様。俺はどうにかそれを固辞して、『アンネリーゼ』に似合いそうな、けど派手でない色とデザインのパレオ付き水着を買うことにした。
「はあ……。わかりました。それではこちらへどうぞー」
 残念そうな店員さんに試着室へ案内される。
 上半身裸になって、さて水着を着用と思ったら、床に置いたはずの水着が消えていた。
「え? あのー、店員さん」
 すると間髪入れずにカーテンの向こうから、声。
「すみませんー、これは本当に私の勝手なお願いなんですけどー、一度でいいからこれ着てみてくれませんかー」
 言って差し出してきたのは、さっき何度も勧められた紐みたいな水着。
「だ、だから! そういうのは嫌だってさっき何度も!」
「だってこの水着、絶対絶対お姫様に似合うと思うんですよー。試着したからには買えなんてそんなひどいことは言いませんからー、むしろ着終わったら私がそのまま買い取るってことでー」
 口調はおっとりしてるけど、言ってることは完全にエロオヤジだぞ、この人。
 どうしよう。制服を着直して店を飛び出すって手もあるよな。
 けど……さっきまでこの店員さんにはよくしてもらったしな。それに、俺もちょっとだけ、この手の水着に興味はあったわけで……。
「ファッションショーみたいなことはしませんからね。これを着たら、さっきの水着を返してくださいね」
 言質をとって、俺は紐状の物体を受け取った。

 入れ替わってほぼ一ヶ月。今さら『アンネリーゼ』の裸にうろたえることなんてないと思っていたけど……こうして装着して鏡に全身を映すと……これは、エロい。
 もちろんまともな店で売っている水着なんだから、肝心なところはきちんと隠している。だがむしろ、肝心なところ「しか」隠してないと言うべきだろう。目の悪い奴が遠くから見たら、ヌーディストと勘違いされること必定だ。
 ……てか、やっぱりこんなのが市販されてるっておかしくないか? あの店員さんが個人的な趣味で仕入れたんじゃないかって気がしてくる。
 まあ、どうでもいいや。この姿を見せれば店員さんも鎮まってくれるはず。そしたら予定の水着を試着してアンネリーゼのチェックを受けて、この羞恥プレイからも解放だ。
「あの、着終わりました」
「はいー、ありがとうございますー」
 そんな返事はすぐさま返ってきたのに、なかなか店員さんは覗きに来ない。もしかしてデジカメか何か準備してるんじゃないだろうな。
 鏡に向かい合ってるのも何だか気恥ずかしくて、カーテンに向き直る。
 と、そのカーテンがいきなり勢いよく開いた。
「遅いです……え?」
「わ……」
 目の前に立っていたのは、アンネリーゼ。
 俺だけでなくあいつも予想してない光景だったんだろう。数秒間の沈黙。
 きょとんとしていた『俺』の顔が、見る見る赤くなっていく。俺自身の顔もどんどん熱くなっていく。
「み、見ないで!」
 叫ぶように言って、乏しい布地を両腕で必死にカバーした。
 おかしいな、この身体は元々アンネリーゼのものなんだし、互いの裸なんて毎日のように風呂場で見せているのに。
 でも今のこの姿は、全裸よりも却ってエッチに思えてならなかった。見られてしまうことが恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。
 足から力が抜けて、両脚を外に広げて床にへたり込む。
「ご、ごめんなさいっ!」
 アンネリーゼの方も動けるようになっていた。鼻の辺りを押さえて、覗きの現場を目撃されたような勢いで走り去っていく。
「あらー、お二人ともずいぶんウブでいらっしゃるんですねー。遠目にも初々しい感じはしてましたけどー」
 店員さんがひょっこり現れる。全部この人の差し金か。
「でもプロポーション抜群の彼女がこんな可愛い格好をしたら、たいていの彼氏にとってはうれしい不意打ちで、じっくり眺めて『きれいだよ』の一言も言って、前よりラブラブになるものなんですけどねー」
「か、彼女とか、彼氏とか、そんなのじゃないですから……」
「ええー? 私の観察眼には狂いがないはずですよー」
 妄言をほざく店員さんを急かして、本来試着するはずだった水着を試して(店員さんの見立ては実に正確でサイズはぴったり。そこは大したものでした、はい)、購入。店を出て携帯電話でアンネリーゼと連絡を取る。
「申し訳ありませんが、先に帰宅しますわ」
 こちらが謝るより早くそう言うと、そそくさと電話を切られてしまう。
 そんなに怒らせちゃったのかなと不安になりながら家に帰ったが、アンネリーゼは別に怒ってる様子もない。
 首を傾げながら居間のごみ箱をふと見ると、真っ赤なティッシュが何枚も捨てられていた。

 その晩から三日間、アンネリーゼは一人で風呂に入った。
 四日目以降は、何でもなかったような顔をしてまた俺に処理をさせ始めたけど(俺としても、そこで嫌がったら何かを認めたようで癪だから、何事もなかったような顔をして元のスタイルに戻ったさ)。



 いかん。
 ちっとばかりエロい水着姿を見られたからって悲鳴を上げるのはなしだろう、男として。いや、確かに今現在の身体は紛れもない女だけど、心はれっきとした男なんだ。
 それなのに最近は、アンネリーゼにちょっと褒められたくらいでうれしくなったり、生理痛で寝込んだのはまだしも弱音を吐いたり……『アンネリーゼ』としての演技と関係ないところで、自分がめっきり女っぽくなりつつある気がしてしかたない。
 だいたい、二年後にはまた元に戻るはずだってのに。ううん、「はず」じゃなくて、必ず戻ってやるんだから!
 というわけで、俺はこの臨海学校で男らしさを取り戻すべく何か男らしいことをしようと心に決めた。もちろん周囲に不審に思われないよう『アンネリーゼ』の言動は維持するが、なあに、男に必要なのは身体でも言葉遣いでもなくて心意気さ。
「アンネちゃーん、砂遊びしよー」
「望むところですわ」
 青い海。白い砂浜。眩しい太陽。弾ける歓声。自由で開放的な、青春の一ページ。
「わあ、おっきいお山になったねえ」
「甘いですわね、わたくしがこれしきのことで満足するとお思い?」
「何をする気さ、アンネ?」
「この砂山に巨大なトンネルを開通させてみせますわ」
「そんな、無理だよ! 崩れちゃうよ!」
「そうだよ、これ以上はあたしたちの手に余る。いいじゃないか、こんな高い山を作れたってだけで」
「いつからあなた方はそのような腑抜けになったのですか?! わたくしたち三人の力を併せれば、できないことなどないでしょう!?」
「! ごめん、アンネリーゼ。あたいが間違ってたよ! 若いうちは安全な株を買っちゃいけないんだな!!」
「わ、わたしもがんばるね!!」

「乾燥していますわ! 水を!!」
「くそ! 崩落なんかさせないぜ! アンネ、今のうちに!」
「お任せください!」
「これは、アンネちゃんの、手……? つながった! 開通したよ!!」

 いかん。
 やってる間は高度成長期の男たちを称える歌が頭の中で流れまくる、勇壮で男らしい行為に思えたものだったが……終わってみると「仲良し三人娘による牧歌的で可愛らしい砂遊び」以外の何物にも見えない。
 やはり、浜辺で安穏としているだけでは男らしさは取り戻せない。泳げないお友達二人には悪いが、午後からはいっちょ海に乗り出させてもらうとしよう。
 で、ただ泳ぐだけじゃいかん。己を鍛えるためには適切な負荷が必要だ。
「竜彦、わたくしと勝負なさい」
 海の家でラーメンを美味そうに啜っていたアンネリーゼに声をかける。まったく、おまえラーメンなんて下賤な食べ物は嫌いじゃなかったのかよ。
「勝負?」
「ええ。少し沖に出たところに小さい岩があるでしょう? 食事時間が終わった後、どちらが先にそこへ泳ぎ着けるか、勝負いたしましょう」
 俺が言うと、周囲のギャラリーからざわめきが起こる。ふふん、勝負と聞けば若人の血が騒ぐのは当然のことだな。
「ま、いいけどさ」
 余裕の表情で応じるアンネリーゼ。ギャラリーがさらにどよめいたのは、『竜彦』らしからぬ受け答えに見えたからだろうか。
 まあ、アンネリーゼが余裕綽々なのは理解できる。元々あいつは入れ替わる前から泳ぎが得意で、今は男の身体になったことで体力まで増強してるもんな。
 けど、午前中から泳ぎまくっていたあいつと違い、俺はスタミナを温存している。きっといい勝負になるはずだ。

 勝負は熾烈なデッドヒートとなった。
 最初飛ばしていたアンネリーゼだが、次第にスピードが鈍っていく。一方の俺は今の体力を見定めて、着実に少しずつ差を縮めていく。
 それでもゴールの岩が見えてくる頃には、さすがに俺も疲れてきた。今やアンネリーゼと横並びで、スピードもほぼ互角。
「負けねえぞ!!」
 誰も近くで聞いてないことを確認してから、一応小声で叫ぶ。
「こっちだって!」
 岩に先に手がついたのは、俺!
「やった!!!」
 そのまま岩の上に上がろうとして、身体がふらつく。やばい、予想以上に疲れてた。
 と、背中が後ろから支えられる。
「大丈夫?」
 アンネリーゼだ。息を切らしてはいても、その腕は力強く俺を支えてくれている。
「あ、ありがと……」
 くう、うれしさも中ぐらいなりってところだ。微妙な悔しさを抱えつつ、俺は小さな岩場に改めて登った。
 浜辺へと振り返れば、思った以上に大勢のギャラリーがこっちを見ている。俺が手を振ると、軽い歓声が上がった。
 アンネリーゼに家にいる時の口調で声をかけようとして、近くの海面をこちらに進むいくつかの頭に気づく。男子と女子が半々くらい。うちの生徒っぽい。
 みんな俺の姿を目に留めると、ちょっと残念そうな顔をして引き揚げて行った。みんな俺らのように勝負でもしたかったんだろうか。よくわからん。
 ともあれ、浜辺から意外に近いし、また誰か来ないとも限らない。学校モードに近い口調で話すことにした。
「わたしの勝ちね」
「そうだね、ぼくが負けちゃった」
 素早く状況を悟ったか、アンネリーゼも男言葉は維持。
 でも『俺』の身体で「ぼく」としゃべるアンネリーゼの姿は、妙に新鮮だな。気弱とか気取りとかそういうマイナスイメージは受けなくて、『竜彦』とは思えないほど品のいい少年って雰囲気になる。
「楽しかった!」
 晴れ渡った空を見上げて言う。
「久しぶりに男の子に戻った気分。むきになるくらい本気で勝負するって、今の身体だとほとんどないから」
 あんまりわかってもらえないかなと思っていたら、アンネリーゼも応じる。
「ぼくは……ちょっと違う意味で楽しかったかな。子供になったみたいだった」
「子供?」
「去年のぼく、臨海学校でほとんど遊んでなかったでしょ」
 そう言えばそうだった。アンネリーゼの奴、自由時間になっても、まだ使いこなせてない日本語を勉強するって部屋にこもってることが多かったな。
「去年だけじゃない。小さい頃からずっと、思いっきり遊ぶことってほとんどなかった」
「それは……どうして?」
 問いかけると、しばらく黙ってから、アンネリーゼは話し出した。
「ぼく、けっこう『自分』の身体に自信があったんだけどね。昔からスポーツは得意だったし、可愛くてスタイルもよかったし」
 自分で言うかとは思ったが、突っ込むより早く話は続く。
「でも……母さんも父さんもそういうところはあんまり褒めてくれなくて。身体には関係ない勉強とか行儀作法とかをきちんとやるようにってだけ言われ続けてたんだ」
「え……あ」
「こうなっちゃった今は、母さんたちの気持ちもよくわかるんだけどさ。教えてもらわなかったこっちとしては、自分に何だか自信が持てなくなったところがあって、じゃあ母さんたちが褒めてくれることをきちんとやり遂げようって考えた」
「だから、勉強を?」
 アンネリーゼはこくんと肯く。
「ぼく、公国で大学卒業したんだよ」
「うえっ?!!」
 演技も忘れて驚いてしまった。頭がいいとは思っていたが、まさかそこまでとは知らなかった。
「その時は母さんたちもさすがに褒めてくれたけど……やっぱり、どこか残念そうな雰囲気があったんだよね。勉強のために色々なことを犠牲にしたせいで、ぼくがいびつな性格になっちゃった、なんて考えてるみたいでさ」
「ああ……」
「納得しないでよ、まったく」
 頬を膨らませて怒るアンネリーゼは、男で『俺』なのに妙に可愛い。
 いや、結局のところ俺は、『竜彦』の顔の向こうにアンネリーゼの顔を見ているんだろうな。
「けど、確かにあの頃のぼくは自分の頭の良さを鼻にかけてた、嫌な奴だったと思う。小さい頃から傍にいた同い年のお付きの子たちも、みんな城からいなくなっちゃって」
 そんな時にアンネリーゼは母親から日本行きを勧められたのだと言う。俺の母親もその時点で一枚噛んでいたんだろうな。
「わたしにとってはとんだ災難ね。おかげでこんなことになっちゃって」
 深い意味もなく、軽い口調で言った憎まれ口。
「……ごめん」
 けれどアンネリーゼの返事は妙に重たくて、焦る。
 親と行き違いがあって、ちょっとひねくれてしまった。それぐらい珍しいことじゃない。
 なのに、面倒な立場と厄介な呪いのせいで、俺にとんでもない迷惑をかけてしまったと、こいつは俺の予想以上、そしてまた必要以上に、責任を感じてしまってるんじゃなかろうか。自分自身がすごく苦労してるってのに。
 そんな風に苦しむなんて……この子が可哀想過ぎる。
「べ、別に今さら謝られたってしかたないじゃないの。済まなく思うんなら、せいぜいわたしにこれ以上余計な迷惑かけないように、努力しなさいよね」
 いかにも『アンネリーゼ』が言いそうな台詞を、偉そうな口調で返した。
 咄嗟に思いついたこと。今の会話全部をいつもの調子に戻してしまえばいんじゃないかって。
 それは、功を奏したらしい。
「う、うん。……がんばる」
 いつもほど力強くはないけれど、アンネリーゼはまた笑ってくれた。
 よかった。

 岩場は本当に小さくて、二人で上がって寝そべるだけで満員になってしまう。
 日向ぼっこしながら、おしゃべりも呑気な話題に切り替えてだらだら過ごしていると、浜辺の方から泳いで来る人影が二つ。隣のクラスのカップルだ。
「あのさ、そろそろいいだろ?」
「何のことですの?」
 話を切り出した男子に俺が問い返すと、女子の方が驚いたような声を上げる。
「まさか、知らないでこの岩に二人で泳いで来たの?!」
「ちょ、ちょっと待って。どういうこと?」
 アンネリーゼがうろたえる様子も無論演技じゃない。
「この岩に二人で上陸するとずっと幸せなカップルでいられるって、うちの臨海学校でかなり有名な言い伝えなんだけど……知らない?」
「だ、だって去年はそんな話……」
 言いかけて、気づく。うちの臨海学校は二つの海岸を一年ごとに交替で訪れていて、去年行ったのはもう一つの海岸だったことに。俺もアンネリーゼも帰宅部で、そういう噂を教え込む先輩とは縁がなかったし。
 そして思い出すのは、この岩へ行こうとアンネリーゼを誘った時の周囲の反応。
 一瞬顔を見合わせた後、俺たち二人は岩の上から海面に飛び込んで魚雷のような勢いで岩から遠ざかり始めた。
 もちろん今さらのそんな行為には何の意味もなく、浜辺に戻った後の俺たちはこれまで以上に大っぴらにカップル扱いされるようになり、俺は「素直に相手を誘えないから勝負なんて口実を使ったツンデレお姫様」と認定されるに至ったのだった。
 ああもう、男らしいどころかますます乙女っぽくなってるみたいじゃないか……。


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6件のコメント

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[C27]

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私怨所で画像を無断転載してる件について。
あなたの作品が俺のとこで転載されていても、文句言えませんよね?
俺はあなた達のことを憎んでいます。

[C28] はじめまして

しゃくられ様
貴ブログは一度拝見させていただきました。今後見る気はありませんが。
無断転載は悪意に基づく行為でしたか。憎んでいる相手の猿真似をする心境は、私にはよくわかりません。
今後のコメントは禁止させていただきます。


スルーを提唱してくださった方
ご忠告ありがとうございます。これ以降は無視することにします。

[C29]

続きは書かれないのですか?

[C30] もうちょっとお待ちください

sageさん、初めまして。
滞ってしまっておりますが、投げ出すつもりはございません。いつまでにと宣言はできませんけれど、なるべく早く次のエピソードをお見せできるよう努力いたします。

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Author:茶
小説『おれがあいつであいつがおれで』で入れ替わりに、漫画『ヒロインくん』でTSに、アニメ『まんが日本昔ばなし』のあるエピソードで女性の変身にはまりました。

ご連絡はirekae☆writer.interq.or.jpまでお願いいたします(☆を@に変えてください)。

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